かわず季語辞典
春の季語一覧
213語を収録
俳句の春は、立春(2月4日頃)から立夏の前日までです。暦の上の春はまだ寒さの残るころに始まり、梅や桜の花、草木の芽吹き、うららかな日差しへと移ろっていきます。
季語は「時候」「天文」「地理」「生活」「行事」「動物」「植物」の分類ごとに並べています。季語を選ぶと、意味と例句を見られます。
時候28語
季節の移ろいや暦、暑さ・寒さなど、時の流れを表すことば。
- 麗かうららか春の日差しが穏やかに降り注ぐのどかな様子。麗かや 赤子の指の よく動く
- 寒明けかんあけ立春を迎え、小寒から節分までの約三十日間続いた「寒」が明けること。寒明けや 水の色より 春見えて
- 啓蟄けいちつ二十四節気の一つ。3月6日頃。啓蟄や 土よりにほふ 雨の跡
- 穀雨こくう二十四節気の一つ。4月20日頃。田の土の 黒く濡れたる 穀雨かな
- 三月さんがつ新暦の三月で、仲春にあたる。三月の 空の高さよ 雲一つ
- 春暁しゅんぎょう春の夜明け。あたりがほのぼのと明るみ始め、鳥の声と柔らかな光が春の訪れをしみじみと感じさせる。春暁の 光うすうす 野の霞
- 春暖しゅんだん春の穏やかな暖かさ。春暖や 縁に出でたる 老いの猫
- 春分しゅんぶん昼と夜の長さが等しくなる春の節目。春分の 光やはらか 野の霞
- 清明せいめい二十四節気の一つ。4月5日頃。清明や 空の青さの 果てもなく
- 遅日ちじつ春の日が長くなること、または夕暮れの遅い様子。遅日かな 橋の上にて 立ち話
- 仲春ちゅうしゅん春の三か月を初春・仲春・晩春に分けた中の二番目、二月節から三月節にあたる時期。仲春の 空の青さや 澄み渡る
- 春暖かはるあたたか春になって気温が上がり体に暖かさを感じること。春暖か 縁側の猫 眠りおり
- 春惜しむはるおしむ過ぎ去ろうとする春を惜しむ気持ちを詠む季語。春惜しむ 母と並びて 坂くだる
- 春寒はるさむ春になってもなお肌に感じられる寒さ。春寒や 海に灯台 白く立つ
- 春の朝はるのあさ春の夜明けから朝にかけての時間。春の朝 畑の土の 匂ひたつ
- 春の色はるのいろ春の草木や花が織りなす色彩の総称。春の色 パレットにまた ひとつ足す
- 春の霜はるのしも春になっても降りることのある霜。春の霜 花の根もとに 白くをり
- 春の昼はるのひる春の日中のゆったりとした時間。春の昼 猫は縁側 離れずに
- 春の夕はるのゆうべ春の夕暮れ。日没が遅くなり、茜色に染まる空がいつまでも明るく、静かな余韻の漂う時間帯をいう。春の夕 山の端ひとつ 紅く染む
- 春の夜はるのよ春のとりどりの夢を誘う夜。春の夜や 宵あけぼのの 其中に蕪村
- 春の宵はるのよい春の日が暮れてしばらく経った宵の口。春の宵 月は霞に とろけけり
- 春日和はるびより春の穏やかに晴れた天気。春日和 猫も日向に 出て眠る
- 春深しはるふかし春も盛りを過ぎ、草木の緑が濃く深まった頃。春深し 羊歯の奥まで 光差す
- 春めくはるめくいかにも春らしい気配が感じられるようになること。春めいて 路地の石垣 苔あをく
- 晩春ばんしゅん春の末にあたる時期で、二十四節気の清明(三月節)から立夏の前日まで。晩春の 庭に静けさ 満ちにけり
- 彼岸ひがん春分の日を中日とする七日間。彼岸来て 墓に供へし 花ほどく
- 余寒よかん立春を過ぎてもなお残る寒さ。余寒なほ 濡れて光れる 石畳
- 立春りっしゅん二十四節気の一つ。陰暦正月節にあたり、春の始まりを告げる日。立春や 雪の底より 水の音
天文26語
日・月・星、雨・風・雪・雲など、空や気象にまつわることば。
- 朧月おぼろづき春の霞に包まれぼんやりと霞む月。朧月 水にほどける 橋の影
- 陽炎かげろう春の日差しで地面が温まり、空気が揺れて見える現象。陽炎の 中より犬の 駆けて来る
- 霞かすみ春に山野や水辺にたなびく薄もや。霞たつ 山の稜線 消えにけり
- 東風こち春に東から吹いてくる風。東風吹くや 港の旗の みな西へ
- 春光しゅんこう春の柔らかな日の光。春光に 水面ゆらめく 入り江かな
- 春塵しゅんじん春の風が運ぶ砂塵や土埃。春塵に 行く人の影 かすかなり
- 春雷しゅんらい春に鳴る雷。春雷や 眠りの浅き 朝のこと
- 春霖しゅんりん春に続く長雨。春霖や 水嵩の増す 橋の下
- 蜃気楼しんきろう春の穏やかな海面などに現れる光の屈折による幻影。蜃気楼 島の浮かびて 消えにけり
- 菜種梅雨なたねづゆ菜の花の咲く三月ごろに降り続く長雨。菜種梅雨 窓の向かうに 煙る丘
- 花曇はなぐもり桜の咲く頃に空が薄曇りになること。花曇 薄日もれくる 午後の庭
- 春霰はるあられ春に降る霰。冷たい雨と霰が交じり合い、季節の変わり目の不安定な空模様を感じさせる。春霰 打ちてはやみぬ 屋根の音
- 春一番はるいちばん立春から春分の間に初めて吹く強い南風。帽子追ふ 春一番の 土手の道
- 春風はるかぜ春に吹く温かく穏やかな風。春風や 堤長うして 家遠し蕪村
- 春霧はるぎり春に立ちこめる霧。山野や水辺に白く立ち込め、景色をぼんやりとさせる。春霧や 湖面に映る 杉の影
- 春曇はるぐもり春に多い薄曇りの空模様。春曇 山の輪郭 やはらかに
- 春雨はるさめ春に降るしとしとと細かい雨。春雨や 小磯の小貝 ぬるるほど蕪村
- 春時雨はるしぐれ春に降るにわか雨。春時雨 傘さすほども なく止みぬ
- 春の雲はるのくも春の空に浮かぶ雲。春の雲 のろのろ動く 昼休み
- 春の空はるのそら春の空の様子。霞がたなびき、光が柔らかく、青空の中に白い雲が浮かぶ。春の空 凧の糸だけ 見えてをり
- 春の月はるのつき春の夜に浮かぶ月。霞の中に滲んで見えることが多く、朧月夜とも呼ばれる。春の月 霞の中に ひとり澄む
- 春の虹はるのにじ春の雨上がりに空に架かる虹。春の虹 山より山へ かかりけり
- 春の星はるのほし春の夜空に輝く星。春の星 ひとつ消えたる 霞かな
- 春の雪はるのゆき春になって降る雪。春の雪 踏み行く跡も なくなりぬ
- 春霙はるみぞれ春先に降る霙。春霙 降りては止んで 道ぬかる
- 雪解風ゆきげかぜ雪解けの頃に吹く風。雪解風 頬を撫でゆく 川沿ひに
地理20語
山・野・川・海・田畑など、大地や水辺の季節の姿を表すことば。
- 残雪ざんせつ春になっても山の谷間や日陰などに残る雪。残雪や 谷の深みに 光りをり
- 春潮しゅんちょう春の潮。水温が上がり始め、海の色も冬とは変わって透明感が増す。春潮に 小舟ゆられて 沖へかな
- 春泥しゅんでい春の雪解けや雨で道がぬかるんだ状態。春泥に 下駄とられけり 里の道
- 雪崩なだれ春に山の斜面の雪が大量に崩れ落ちる現象。山里の 窓を震はす 雪崩かな
- 苗代なわしろ稲の苗を育てるために設けた田。苗代の 水のぬるみや 夕日さす
- 春田はるた春の田んぼ。代かきや田植えの前の水を引いた田や、青々と苗が育ち始めた田の情景。春田かな 空の青さを 映しをり
- 春の池はるのいけ春の池の様子。氷が融け、水面が春の光を反射してきらめく。春の池 波紋ひとつに 鯉見えず
- 春の海はるのうみ穏やかに凪いだ春の海。春の海 ひねもすのたり のたりかな蕪村
- 春の川はるのかわ雪解け水や春雨で水かさが増した川。春の川 鳥居の影を ゆらしけり
- 春の滝はるのたき春の雪解け水を集めて勢いを増した滝。春の滝 音たかだかと 峡に満つ
- 春の土はるのつち春になって柔らかくなった土。春の土 握れば崩れ 手を染める
- 春の野はるのの春の野原の様子。枯れ草の中から若草が芽吹き、野草の花が点々と咲く。春の野に 伏してしばらく 空を見る
- 春の浜はるのはま春の浜辺の様子。冬の間は荒れていた浜が穏やかになり、砂浜が明るい日差しを受けて白く輝く。春の浜 貝殻ひろふ 子の声す
- 春の水はるのみず春の雪解けや春雨によって増した川や池の水。春の水 山の影ごと ゆるゆると
- 春の湖はるのみずうみ春の湖の情景。冬の厳しさが去り、鏡のように静まり返った湖面に山や空が映り込む。春の湖 靄に対岸 消えてをり
- 春の道はるのみち春の景色の中の道。両脇に花が咲き、若草が芽吹いた春ならではの道の情景。春の道 遠く霞んで つづきけり
- 春の峰はるのみね春の山の峰。雪が解け始め、芽吹きが始まった山頂や尾根の景色。春の峰 霞に半ば 消えにけり
- 春の山はるのやま芽吹きで淡い緑に染まり始めた山。春の山 ひとつ越ゆれば 母の里
- 山笑ふやまわらう春になって山が芽吹き、萌えいでる様子を笑いに見立てた語。山笑ふ ふもとに赤き 郵便車
- 雪解ゆきどけ春の温みで雪が解け始める様子。雪解けの 水のにごりや 村の春
生活28語
衣食住や仕事、遊びなど、人の暮らしにまつわることば。
- 磯遊びいそあそび春の磯で貝や海藻を拾い、磯の生き物を観察して楽しむこと。磯遊び 子らの歓声 波に消え
- 磯菜摘いそなつみ春の磯で海藻や磯の植物を摘み取ること。磯菜摘 籠より潮の したたれり
- 鶯餅うぐいすもち鶯の声が聞かれる春に食べる緑色の餅菓子。ふたつ目の 鶯餅に 手をのばす
- 草餅くさもちヨモギを練り込んで作った緑色の餅。草餅や 祖母の手つきを まねてみる
- 桜餅さくらもち桜の葉で包んだ春の和菓子。桜餅 葉の香をほどく 昼下がり
- 潮干狩しおひがり春の干潮時に浜辺で貝を採る行楽。潮干狩 バケツの底に 貝の音
- 春耕しゅんこう春に田畑を耕す農作業。春耕の 鍬の刃光る 朝日かな
- 春愁しゅんしゅう春に感じるもの憂い気分。春愁や 紅茶の冷めて ゆくばかり
- 春眠しゅんみん春の温かさに誘われてつい眠り込んでしまう状態。春眠や 膝の上なる 文庫本
- 卒業そつぎょう学校を卒業すること。卒業の 日の空やけに 青かりし
- 凧揚げたこあげ春の空高く凧を揚げて遊ぶこと。凧揚げの 糸張りつめて 土手の風
- 種蒔たねまき春に畑や田に種を蒔く農作業。種蒔いて 土かぶせたる 手のぬくし
- 茶摘みちゃつみ八十八夜のころに行われる新茶の摘み取り。茶摘みうた 霞む山べに 消えにけり
- 摘み草つみくさ春の野に出て草を摘む行為、またはその遊び。摘み草の 籠いつの間に 満ちにけり
- 入学にゅうがく四月に新たな学校生活を始めること。入学や 桜ちるなか 校門に
- 野遊びのあそび春の野に出て遊ぶこと。野遊びや 子らの寝息の 帰りバス
- 花の宴はなのえん花見のための宴会。桜の花の下に集い、飲食を共にして春を楽しむ宴。花の宴 琴の調べの 流れけり
- 花見はなみ桜の花を愛でながら野外で宴を楽しむ行事。花見して 帰る人々 日の暮れぬ
- 花見酒はなみざけ花見の席で酌み交わす酒。花見酒 零して惜しむ 花の下
- 針供養はりくよう二月八日に使い古した針を豆腐や蒟蒻に刺して供養する行事。針供養 豆腐に刺して 春の朝
- 春ショールはるしょーる春先に羽織る薄手のショール。春ショール ふはりと肩に かけて出づ
- 春の遠足はるのえんそく春に学校で行われる遠足。遠足の 列の先頭 野を急ぐ
- 春の旅はるのたび春の季節に行う旅。春の旅 荷物の軽さ 足取りも
- 春の宿はるのやど春の旅先の宿。花見や春の旅の途中に泊まる宿で、縁側から見える春の景色や花の香りが旅情を深める。春の宿 障子一枚 山見ゆる
- 春の夢はるのゆめ春の夜に見る夢、またはうっとりとした春の気分のたとえ。春の夢 覚めても残る 笑ひ声
- 春場所はるばしょ三月に大阪で開かれる大相撲の本場所。春場所や 土俵の砂の 乾きたる
- 若布刈わかめかり春に柔らかく育った若布を刈り取る漁業。若布刈る 磯の香春の 浜に満つ
- 蕨餅わらびもち蕨粉を使った春の和菓子。蕨餅 きな粉の甘さ 春の味
行事14語
年中行事や祭り、記念日や忌日など、暦と結びついた催しのことば。
- 磯開きいそびらき春に海女や漁師が禁漁期を解いて磯に入ること。磯開き 海女の笑顔の 春の朝
- 観桜会かんおうかい桜の花を愛でるために公的に催される宴。町内の 観桜会の ござ並ぶ
- 灌仏かんぶつ四月八日の花祭りに誕生仏に甘茶を注ぐ儀式。灌仏の 甘茶こぼれて 石畳
- 社日しゃにち春分に最も近い戊の日。社日とて 田の神さまに 酒そそぐ
- 春分の日しゅんぶんのひ昼と夜が等しくなる春分を祝う国民の祝日。窓開けて 春分の日の 風を入る
- 田楽でんがく春の農事に際して五穀豊穣を祈る民俗芸能。田楽の 鉦打ち響く 春の暮
- 涅槃会ねはんえ二月十五日に釈迦の入滅を偲んで行われる仏教行事。涅槃会や 古刹に人の 絶えもせず
- 初午はつうま二月の最初の午の日に稲荷神社で行われる祭り。初午や 旗はためける 稲荷道
- 花祭はなまつり四月八日に行われる釈迦の誕生を祝う仏教行事。花祭 甘茶のかおり 堂に満つ
- 春の社はるのやしろ春の神社。春祭りや初午など、春は神社の行事が多く、境内に花が咲き神聖な雰囲気と春の気配が重なる。石段を 春の社へ 駆けのぼる
- 春祭はるまつり農作物の豊穣を祈って行われる春の祭礼。春祭 笛の音遠く なりにけり
- 彼岸会ひがんえ春分の日を中日とする彼岸の仏事。彼岸会や 香のけむりの まっすぐに
- 雛祭ひなまつり三月三日の桃の節句。雛祭 小さき膳に 箸そろふ
- 山焼きやまやき春の農事始めに山の枯れ草を焼く行事。山焼きの 煙たなびく 春の暮
動物38語
鳥・虫・魚・獣など、季節ごとに姿を見せる生き物のことば。
- 揚雲雀あげひばり空高く舞い上がりながら鳴くヒバリのこと。揚雲雀 声だけ残り 見えぬかな
- 虻あぶ春の野や花に現れる双翅目の昆虫。教室の 窓打つ虻の 羽音かな
- 鶯うぐいす春を告げる鳥として名高く、ホーホケキョと澄んだ声で鳴く。鶯や 柳のうしろ 薮の前芭蕉
- 蝌蚪かと春の池や田水に群れる蛙の幼生。蝌蚪の群れ 田水濁らせ 動きたる
- 蛙かわず春の池や田んぼで鳴き始めるカエル。古池や 蛙飛び込む 水の音芭蕉
- 雉子きぎす雉の古語・雅語表現。雉子啼くや 朝霞立つ 麦の畑
- 雉きじ春に鳴き声が目立つ日本の国鳥。雉鳴いて 春の野原に 朝日差す
- 囀りさえずり春になり小鳥たちがにぎやかに鳴き交わすこと。囀りや 光の粒の 散る庭に
- 桜貝さくらがい春の浜辺に打ち寄せられる薄桃色の小さな二枚貝。桜貝 一つ拾ひて 春の浜
- 地虫出づじむしいづ春の暖気とともに冬眠していた虫が土中から這い出てくること。地虫出づ 柔らか土の ほぐれつつ
- 雀の子すずめのこ春に生まれた雀の雛。雀の子 石垣の陰 跳ねてをり
- 巣燕すつばめ春に渡来した燕が軒先などに巣を作ること、またその燕。巣燕の 泥を運べる 駅の軒
- 田螺たにし春の田や水辺に見られる巻貝。田螺這ふ 水の底より 春の泥
- 蝶ちょう春の野に羽化して舞う美しい生き物。蝶々や 何を夢見て 羽づかひ千代女
- つばくろつばくろ燕の異称で、つばくら・つばくらめとも。つばくろや 空の青さを きりきりと
- 燕つばめ春に南から渡ってくる渡り鳥。改札を 燕くぐりて また戻る
- 鳥帰るとりかえる冬を日本で越した渡り鳥が春に北方へ帰ること。鳥帰る 空の彼方に 雲薄く
- 鳥雲に入るとりくもにいる春、北へ帰る渡り鳥が雲のかなたへ消えてゆくこと。鳥雲に 入る見送りの 手の低く
- 鳥の巣とりのす春に鳥が作る巣。繁殖期を迎えた鳥が小枝や草などを集めて巣を組む。鳥の巣や 風のたびごと 揺れてをり
- 蜷にな春の小川の底に群れる巻き貝。蜷の道 一筋光る 春の川
- 猫の恋ねこのこい春に盛りとなる猫の恋の季節。猫の恋 月の細さに 鳴きにけり
- 蜂はち春の花を訪れ蜜や花粉を集める昆虫。蜂の来て ジャムの小瓶を めぐりけり
- 初蝶はつちょうその年に初めて見る蝶。初蝶や 畑の畝を 縫ふやうに
- 初音はつね鶯が春になって初めて鳴く声。初音聞く 杉の梢の 明けにけり
- 蛤はまぐり春の行事である潮干狩りで知られる二枚貝。蛤の 殻に春潮 満ちてくる
- 春鴨はるかも春の池や川に残る鴨。春鴨や 水面に揺れる 日の光
- 春蚕はるこ春に育てる蚕。春蚕の 桑食む音の 静けかな
- 春の雁はるのかり春に北へ帰っていく雁の群れ。春の雁 列をなしつつ 北へゆく
- 春の蜘蛛はるのくも春の陽気に活動を始める蜘蛛。春の蜘蛛 糸を一筋 陽にかける
- 春の鹿はるのしか角の生え替わる春の鹿。春の鹿 霞む峰へと 歩み入る
- 春の蛸はるのたこ春に旬を迎える蛸。産卵を前に身が締まり、明石など各地で春の味覚として珍重される。春の蛸 市の桶にて うごめける
- 春の鶴はるのつる春の野や湿地に立つ鶴の姿。春の鶴 一羽ゆたかに 野を渡る
- 春の鳶はるのとび春の空高く輪を描いて飛ぶ鳶。春の鳶 ひとつ高みに 消えにけり
- 春の鳥はるのとり春に見られる鳥の総称。春の鳥 声のあちこち 移りゆく
- 春の鰊はるのにしん春に北海道沿岸に押し寄せる鰊の大群。北の浜 春の鰊に 沸きにけり
- 春の猫はるのねこ春に恋の季節を迎えた猫。春の猫 塀の上にて 目細める
- 春の鮒はるのふな春に産卵期を迎え浅瀬に集まる鮒。春の鮒 澄みたる水に 群れ泳ぐ
- 雲雀ひばり春の野原に高く舞い上がりながら澄んだ声でさえずる鳥。雲雀より 空にやすらふ 峠哉芭蕉
植物59語
花・木・草・木の実・野菜など、季節の草木のことば。
- 梅うめ百花に先駆けて咲く香高い花。二もとの 梅に遅速を 愛す哉蕪村
- 落椿おちつばき地に落ちた椿の花。落椿 踏まぬやう行く 朝の道
- 草青むくさあおむ春になり野や庭の草が青々と色づき始めること。草青む 土手に子の靴 並びけり
- 草の芽くさのめ春に地中から顔を出す草の芽吹きのこと。草の芽の 踏まれてもなほ 伸びにけり
- 紅梅こうばい紅色に咲く梅の花。冬枯れの景色の中で鮮やかに色を添え、春の到来を告げる喜びを体現する。紅梅や 雪消えやらぬ 枝のさき
- 木の芽このめ春に木の枝先から芽吹き始めた新芽。木の芽張る 雨の静かな 山の道
- 辛夷こぶし早春の山に白い花を咲かせる樹木。辛夷咲く 山の高さよ 空の青
- 桜さくら日本の春を象徴する花。さまざまの こと思ひ出す 桜かな芭蕉
- 桜草さくらそう春の野に自生する多年草で、桜に似た淡紅色の小花を茎の先に輪生させる。桜草 野の片隅に 息づきて
- 芝桜しばざくら春に地面を覆うように淡紅・白・紫の小花を一面に咲かせる多年草。芝桜 丘の斜面を 染めにけり
- 春蘭しゅんらん山野に自生する野生のランで春に咲く。春蘭の 咲きてしづけき 岩の陰
- 沈丁花じんちょうげ早春に白または淡紅の小花を密集して咲かせ、強い芳香を放つ常緑低木。沈丁花 香り来たりて 春知りぬ
- 杉菜すぎな春になると土中から緑の葉茎を伸ばすシダ植物。杉菜野に 春の光の さし渡り
- 菫すみれ春の野道や土手に小さな紫の花を咲かせる。菫咲く 線路のそばの ひとところ
- 芹せり春の七草の一つ。芹摘めば 川の水冷え 手に沁みぬ
- 竹の秋たけのあき春に竹の葉が黄ばんで落ちる現象。竹の秋 薄日の林 黄にけむる
- 蒲公英たんぽぽ春の野や道端に黄色い花を咲かせる草。たんぽぽや 道のかたへに 黄の光
- 土筆つくし早春の野に顔を出すスギナの胞子茎。土筆野に 子の背丈ほど 伸びにけり
- 躑躅つつじ晩春から初夏に鮮やかな紅・白・紫の花を一斉に咲かせる。躑躅咲く 石垣沿ひの 坂の道
- 椿つばき冬から春にかけて光沢ある濃緑の葉の間に紅や白の花を咲かせる。椿落つ 音なく赤き 土の上
- 苗なえ春に育てられる稲などの幼い植物の総称。春の苗 小さく揃ひ 田を待てり
- 苗木なえぎ春に植えつける幼い木の総称。苗木植う 土の匂ひの 春の午後
- 菜の花なのはな黄色い小花が一面に咲き誇るアブラナの花。菜の花や 月は東に 日は西に蕪村
- 野の花ののはな春の野山に咲く名もなき草花の総称。野の花に 名を問ふ子らと 歩む春
- 白梅はくばい白く清楚に咲く梅の花。白梅の 香りこぼるる 夜の縁
- 初桜はつざくらその年に初めて咲いた桜。初桜 折しも今日は よき日なり芭蕉
- 花杏はなあんず春に咲く杏の花。梅と桜の間に咲く淡いピンク白色の花で、実よりも先に花を開く。花杏 散りてあたりに 白を敷く
- 花海棠はなかいどう桜と並ぶ春の花木で、深紅から淡紅へ変わる花を垂れ枝につける。昼の雨 花海棠の しだれをり
- 花楓はなかえで楓の春の花。花楓 風にほぐるる 赤き粒
- 花辛夷はなこぶし辛夷の別称で早春に葉より先に白い大輪の花を上向きに咲かせる。花辛夷 空に向かひて 開きたり
- 花蘇芳はなずおう春に葉より先に枝や幹に直接紅紫色の小花を密につける落葉低木。花蘇芳 枝に紅紫の 春来たり
- 花大根はなだいこん春に淡紫色の十字形の花を咲かせる多年草。空き地みな 花大根の むらさきに
- 花韮はなにら春に星形の白い花を咲かせる南米原産の球根植物。花韮の 白星こぼれ 春の庭
- 花吹雪はなふぶき桜の花びらが風に散り舞う様子。花吹雪 人の肩にも 積もりけり
- 花水木はなみずき北米原産で桜の後に白や淡紅の花弁状の総苞片をひらく。花水木 空に白さを ひろげたり
- 花桃はなもも観賞用に改良された桃で、紅・白・絞りなど華やかな花を密につける。花桃の 紅白交じる 垣根かな
- 春落葉はるおちば春に新芽を出す前に落ちる常緑樹の古い葉。春落葉 踏んで参道 長くなる
- 春草はるくさ春に芽吹く草の総称。春草を 踏めば足裏 やはらかし
- 春芝はるしば冬に枯れて茶色だった芝が春の暖かさで鮮やかな緑に蘇る。春芝を 踏めば柔らか 足の裏
- 春の苔はるのこけ冬の間は乾いていた苔が春の雨と温もりで瑞々しく緑を深める。春の苔 雨あがりたる 庭の石
- 春の竹はるのたけ春の竹林は若竹が一斉に伸び始め、風に揺れる青い葉の音が清涼感を与える。春の竹 風にさわさわ 揺れにけり
- 春の花はるのはな春に咲く花の総称。春の花 供へて祖父の 写真かな
- 春の松はるのまつ春になって松の枝先に淡黄色の新芽が伸び始める様子。春の松 新芽の先に 光あり
- 榛の花はんのはな早春に花穂をたれて咲く榛の木の花。榛の花 川辺の風に 揺れにけり
- ふきのとうふきのとう雪の消えるころ真っ先に土から顔を出す蕗の花茎。ふきのとう 雪の隙間に 顔を出す
- 藤の花ふじのはな晩春に藤紫や白の花が長い花房となって垂れ下がる。藤の花 風にゆらゆら 池の上
- 牧草ぼくそう春に萌え出る牧場の草のこと。牧草の 青さ広がる 春の丘
- 三椏の花みつまたのはな早春に黄色い小花が球状に集まって咲く三椏の花。三椏の 花黄に山の 径明かし
- 木蓮もくれん早春に葉より先に大きな紫や白の花を咲かせる樹木。木蓮や 空に向かひて 開ききる
- 桃の花もものはな春に咲く桃の花。淡い紅色の花びらが枝を彩り、雛祭の頃に咲く。桃の花 垣根の外に こぼれけり
- 柳やなぎ芽吹いた若緑の葉が風にそよぐ春の柳。川風に 柳のゆるる 舟溜り
- 山桜やまざくら山野に自生する日本古来の桜で、葉と花が同時に開く。山桜 葉と花ともに 山の春
- 山吹やまぶき渓流沿いに鮮やかな黄色の花を咲かせる低木。山吹や 水のながれを 染めぬべく
- 雪柳ゆきやなぎ春に細長い枝に白い小花を雪が積もったように無数につける落葉低木。雪柳 白く枝垂れて 春の風
- 蓬よもぎ春に萌え出る若芽は草餅に用いられ、独特の香りが春を感じさせる。蓬摘む 野の香の春を 連れてくる
- 連翹れんぎょう早春、葉より先に黄金色の小花を枝いっぱいに咲かせる落葉低木。連翹の 黄が庭隅を 照らしをり
- 若草わかくさ春に野原や土手に萌え出る柔らかな新芽の草。若草や 土手なだらかに 日が当たる
- 若布わかめ春に旬を迎える海藻で、柔らかく香りのよい若い若布が磯に茂る。若布刈る 磯の香りや 春の波
- 蕨わらび春に山野に芽吹くワラビ。蕨摘む 籠に日差しの こぼれけり